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ノンフィクション、初版1983

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Murphy's Boy彼の名はケヴィン。でも、収容先の施設ではズー・ボーイ(動物園の檻のなかの子)と呼ばれていた。彼はしゃべらなかった。テーブルの下に隠れ、椅子で柵を作ってまわりを固めた。入所以来4年間、建物から一歩も外に出なかった。水を怖がり、シャワーを浴びようとしなかった。裸になり、着替えをするのを恐れていた。彼は16になろうとしていた。

少年を何とか変えようと、ケヴィンのいた青少年治療センターの職員がトリイを雇った。トリイは彼に本を読んで聞かせ、自分で読んでみるように勧めた。彼が立てこもっている椅子の檻のなかに一緒に潜り込むと、ケヴィンは話をした。それから彼は鉛筆や筆を使って絵を描くようになり、当意即妙の機知に富んでいる自分や、滔々とわき出る激しく残忍な憎悪を義父に対して抱いている自分を明らかにした。

ヘイデンの筆は非常に読みやすい。ケヴィンは恐ろしかったに違いないが、彼女に対してはほとんどおびえることがなかった。つまり、これは恐怖を誘う本ではない。これは、我々みんなが必要とする安心の書である。たとえこの世が破滅しようと、愛がその力を失うことはない。我々は耳を傾けさえすれば、互いに互いを癒すことができるのである。
−クリスティナ・ロブ

執筆秘話

トリイはケヴィンに取り組んでいた期間、並行してシーラやジェイディにも取り組んでいました。

『檻のなかの子』は久しくトリイのお気に入りの書でした。「『檻のなかの子』で、書くという声を自分のなかに見出した気がする」のだそうです。「『シーラという子』では、慰めにはならないほど私の若さが丸出しになっていたし、『よその子』は、できることなら一から書き直したいくらい」

あの人はいま

チャリティは消息不明です。

すでに30代になったケヴィンは、成功を収め、充実した大人の人生を送っています。読者のために、次のメッセージを送ってくれました。

こんにちは。ぼくはトリイの本、『檻のなかの子』のケヴィンだった者です。ぼくは、元気にやっていることをお伝えしたいと思います。高校を卒業してから2年間、コミュニティ・カレッジに通いました。その後は病院に職を得て、いまでも同じところで働いています。この職場を大いに気に入っています。

カレッジ卒業後に結婚しました。妻はスーといいます。ダニエルというすばらしい男の子に恵まれました。この子は、ぼくの人生でなによりも大切なものです。そして、息子の良い父親になろうと努力しています。息子は野球好きの明るい男の子です。だから、ぼくらは親としてうまくやっていると思っています。

ジェフはもう50代です。いまでもカリフォルニアに住んでいて、精神科医としての仕事を続けています。

ぼくのその後に興味を持ってくれるみなさん、どうもありがとう。トリイとぼくは、はらはらどきどきした期間を共にしました。面白いことずくめで笑ってばかりいました。トリイのユーモアのセンスがぼくのあの数年間を変えてくれたのです。ぼくはあれからも充実して有意義な年月を過ごしてきましたが、あのときほど笑ったことはありません。

ぼくは結構いい人生を送ってきました。相棒のビルとは共白髪の仲で、チャールズという10歳になる養子を育てています。職業という点では変化があり、社会病質者や重度の精神異常者に取り組むようになりました。大変な仕事ですが、満足感も負けず劣らず大きいです。

みなさんがトリイのウェブサイトを楽しんでくれますように。ざっと目を通しましたが、彼女と過ごした日々に戻ったような気分になりました。トリイの書き方はまさに彼女の話し方そのものです。だから、これはトリイそのものです。どうぞ楽しんでください。

 

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