フィクション

ひまわりの森

トリイが1980年にウェールズに住む友人たちを訪ねたときのことです。滞在していた石造りの山小屋で暖炉の前に坐り、お茶が入るのを待ちながら、トリイは地元の新聞を手に取り、ある記事を読みました。それは、第二次世界大戦中のナチの「レーベンスボルン」計画に関与したことがある地元の女性に関するものでした。トリイはその晩、「どうしても書きたいテーマがみつかった」とエージェントに書き送りました。そのまま4年の月日が経ち、『ひまわりの森』として結実しました。

トリイは、友人の山小屋周辺の環境をウェールズの地として描写しました。『ひまわりの森』の主人公である「マーラ」は実在の人物を下敷きとしているわけではなく、世代を越えたトラウマの問題を追求するために、トリイが作りだした人物に過ぎません。トリイは、『ひまわりの森』の読者が、そして書評家でさえもが、マーラが架空の人物であることを信じようとしない場合が多いという事実は喜ぶべきことなのか、屈辱的なことなのかよく分からないと言っています。

機械じかけの猫

こうして、トリイ・ヘイデンの最新小説は始まります。これは家族の交流、情緒障害、そして尽きるところ、創造性を扱った非常に興味深い研究です

9歳のコナーは「自閉症」と診断されて、児童精神科医、ジェームズ・イニスの遊戯療法室にやってくる。母親のローラは、超然としてつかみ所のない小説家で、息子をもてあましていた。農場主である父親は、ローラとの離婚騒ぎの混乱で、コナーに問題があるとは感じていない。

コナーの6歳になる妹、モーガナは、兄には本当に幽霊が見えるのだと言い張る。

ジェームズは、コナーは自閉症ではないと確信するにつれて、最初はコナーの「猫が知っているもの」の奇妙な世界に、ついでモーガナの「ライオンキング」という友達の話に引き込まれてしまう。

しかし、ジェームズが一番深く引き寄せられたのはローラの世界だった。最初、それは、寂しげで、どちらかと言えば気むずかしい女性の世界だったが、やがては彼女の空想の世界、すなわち、彼女が作り上げながらも、現実なのかそうではないのか理解しづらい日常生活を送る人々の光景と臭いに満ち満ちている世界に引き込まれていく。

これは、憑かれたように書かれた一筋縄ではいかない豊かな小説だ。思想家、とくに最後のページをめくった後に本について思いを巡らすことが楽しい者にとって、なによりのごちそうである。

-キャロル・ソーソン